貴女の意識は誰に支配されているの?
母の見舞いに行った父からFaceTimeで連絡が入った。
母はいまだに記憶がハッキリしないようで、僕の事も「長男」としか認識しておらず、僕が住んでいるところも「池袋」だと思っているようだ。
池袋は父と母が出会った場所なので、思い入れが強いのかもしれない。
記憶の積み重ねが人格を形成しているのであれば、今、僕の目の前に映っているのは母の姿をした別人だ。冷たい言い方かもしれないが、母であって母ではない。
毎日、LINEゲーム「クッキーラン」でハートを送ってきていた母はもういない。
週に数回、しつこいくらい僕に電話をしてきた母ももういない。
これから先、僕は母の姿をしたこの "ご老人"と、どのように接したらいいのだろうか?
その答えを出すまでには、まだ多くの時間がかかりそうだ。